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第14話 好きになってもらうための努力

last update 最終更新日: 2025-03-01 21:53:21

「別の世界線では、穴織くんが主役になれる……。なるほど」

確かに話す武器を持って化け物の戦っている穴織は、主役級のストーリーがありそうだ。そう納得した穂香は、ハッと気がつく。

「じゃあ、生徒会長や先生にもそういう隠された秘密があるってこと!?」

「そうなりますね」

「どうして、この世界は平凡すぎる私に、そんなキャラの濃い人達と恋愛させようと思ったの!? 絶対に無理でしょうが!」

頭を抱えた穂香に、レンは「深く考えたら負けですよ」と微笑みかける。

「夢なのに、なかなか冷めないし……。やっぱりもうレンに好きになってもらうしかないよ」

穂香が縋るように見つめると、レンの瞳がスッと細くなる。

「それこそ無理だって言っているでしょう? 人の心はどうにもなりませんよ。そんなことより、せっかく穴織くんの秘密が分かったのだから、穴織くんと恋愛すればいいのでは?」

「いや、記憶を消されそうになったんだよ⁉ 怖いから無理! 私はレン以外と恋愛は無理だから!」

レンは、深いため息をついた。

「そもそも、私があなたを好きになるためには、あなたも私のことを好きになる必要があるのでは?」

「そっか……そうだね。恋愛をするんだから、お互いに歩み寄らないといけないよね」

それが分かっても恋愛経験ゼロの穂香には、何をどうしたらいいのか分からない。穂香は、改めてレンのいいところを探してみた。

「えっと、素敵なメガネですね」

「それってもしかして、私をほめて仲良くなろうとしています?」

「うん」

「でしたら、もっと他に言い方があるでしょうに、まったくあなたという人は……」

レンのあきれた視線が穂香に刺さる。

「だって私、付き合ったことはもちろん男友達すらいたことがないんだって! だから、私に恋愛は無理だって言っているのに……」

うっかり涙ぐむと、レンはまたため息をついた。

「あなたに恋愛経験がないことくらい知っていますよ。でも、ここは恋愛ゲームの世界なんですよ? 難しく考えずゲーム感覚で頑張ってみては?」

「ゲーム感覚……ということは、レベル上げとか?」

穂香の言葉を聞いたレンは「と、言うと?」と言葉の先をうながす。

「ほら、ゲームってレベルを上げたら強くなるでしょ? だから、私は女子力レベルを上げて、レンの好みの女性を目指すのはどうかな?」

「なるほど」

「で、レンの好みは『積極的に問題を解決する人
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    【同日 朝/体育館裏】通学路を歩いていたのだから教室に着くと思っていた穂香は、目の前に現れた文字を見て目を見開いた。「あれ? どうして体育館裏に飛ばされたの?」その問いに応えるように、レンがポケットから折りたたんだ紙を取り出す。「おまじないを完成させろということでは?」「あっ、そうか。おまじないで使った紙を、こっそりと学校内のどこかに埋めないとおまじないが完成しないんだったね」辺りを見回しても人の気配はない。穂香とレンは視線を合わせて頷いたあと、やわらかそうな部分の土を手で掘って紙を埋めた。「これでよし!」立ち上がった穂香は、背後から声をかけられ身体をビクッと震わす。「白川と高橋?」振り返ると真っ青な髪が、穂香の視界に映った。「せ、先生」「お前達、ここで何をしているんだ?」青い瞳は、こちらを探るように見つめている。返答に詰まった穂香の代わりにレンが答えた。「先生こそ、こんなところで何をしているんですか?」「ああ、俺か? 俺はな、生徒の監視だよ」「監視?」レンの声が低くなったような気がする。先生は「ほら、最近変なのが校内で流行ってんだろ」とため息をついた。「確か『恋が叶うまじない』だったか?」ギクッとしてしまった穂香を、レンがさりげなく背後に隠す。「お前達は、やってないだろうな?」その声は咎めるようだった。(これ、バレたらまずいんじゃ……)あせる穂香とは対照的に、レンは涼しい顔で「やっていません」と嘘をつく。「まぁ、なんでもいいが、まじないはやめとけよ」「どうしてですか?」穂香が不安そうな顔をすると、先生はしゃがみ込んで木の枝を拾い地面に『呪い』と書いた。「まじないは、漢字で書くとコレだ。ようするに、呪(のろ)いだ、呪い」「呪い……」青ざめる穂香を見て、先生は表情をやわらげる。「怖がらせて悪いな。まぁ、この世界のまじないは遊びみたいなものだから、なんの影響もないんだが念には念をだ」先生が立ち去ると、風景が変わった。【同日 昼/教室】「お昼になってる……」穂香は2つ持ってきたお弁当のうち、1つをレンに渡した。「今日も、私の分があるんですね」「嫌だった?」「いいえ、食べてもお腹を壊さないことが分かったのでいただきます」「失礼な……。だから、私じゃなくてお母さんが作ったから大丈夫だって」昨日と

  • 恋愛ゲームの世界から脱出する方法はイケメンからの告白!?   第16話 おまじないの効果は?

    【同日 夜/自室】いつのまにかパジャマに着替えた穂香は、一人ベッドに腰かけていた。(もう夜になってる。恋愛イベントがないときは飛ばされるはずなのに、飛ばされないということは……)穂香の手元には穴織から貰ったおまじないの紙と、そのやり方が書かれた紙がある。(このおまじないが、恋愛イベントに関係あるってことだよね? でも、レンはやるなって言ってた)悩む穂香の前に透明な2つのパネルが現れた。それぞれのパネルには『おなじないをやる』『おまじないをやらない』と書かれている。(選択肢が出てきたってことは、かなり重要なイベントなんじゃないのこれ?)どちらのパネルを押そうか迷った末、穂香は『おまじないをやる』パネルにふれた。そのとたんにパネルが光り消えてなくなる。(失敗してもループするだけだから、やるだけやってみよう!)穂香はおまじないのやり方にサッと目を通す。(まず、『好きな人を思い浮かべながら針で指を刺し、おまじないの紙の中心に自分の血をつける』って、だいぶ本格的……。おまじないというよりヤバイ儀式っぽい)その紙を折りたたんで枕の下に敷いて寝ると、思い浮かべた人の夢が見れるらしい。そして、次の日に、この紙をこっそりと学校内のどこかに埋めるとおまじないが完成すると書かれている。(ふーん? これを何回も繰り返すと、夢が現実になって恋が叶うんだよね? 本当かな)針で指をさすのはなかなか勇気がいったが、やるしかないと覚悟を決めた。おまじないの準備を終わらせると、枕の下におまじないの紙を入れる。(この状態で寝たら、好きな相手の夢が見れるんだよね? 私、レンのこと、別に恋愛相手として好きじゃないけど、おまじない成功するのかな?)そんなことを考えながら穂香は、そっと目を閉じた。*穂香が目を開けると、学校の教室に緑髪の青年が佇んでいた。(レン、だよね?)どうしてそう思ったかというと、レンがトレードマークともいえるメガネをかけていなかったから。穂香に気がついていないのか、レンは教室の天井を見たり、机にさわったりしながら、首を捻っている。「夢をコントロールする機能なんて、この世界にはないはずなのに……」そんな呟きが聞こえてきた。「レン」穂香が声をかけると、レンは驚きながら振り返る。「穂香さん? まさか、本当にあのおまじないに効果があったなんて」

  • 恋愛ゲームの世界から脱出する方法はイケメンからの告白!?   第15話 怪しいおまじない

    レンと並んで通学路を歩いていると、風景が変わった。【同日 昼/教室】「うわっ、お昼まで飛ばされた!?」驚く穂香の横で、レンが考え込むように腕を組んだ。「恋愛に繋がるイベントが何も起こらなかったということですね」「そ、そうなんだ」「そもそも、サポートキャラの私との恋愛イベントが、この世界に存在するのかすら怪しいですが」「うっ、それを言われたらつらい! でもだからこそ、自分でイベントっぽいことを準備して来ました」穂香は鞄の中からお弁当を2つ取りだした。「すごい食欲ですね」と言うレンにひとつ渡す。「それはレンの分だよ」「私? いえ、私は食べません」「そんなこと言わずに! せっかく持ってきたんだから」半ば無理やりお弁当を押し付けると、レンはしぶしぶ受け取る。「……うーん……」お弁当のフタを開けたものの、食べようとはしない。穂香は、卵焼きをお箸で掴むとレンに差し出した。「はい、あーん」「怒りますよ?」「そんな怖い顔しないでよ! これでもレンに好きになってもらうために頑張ってるんだから」必死な穂香に戸惑ったレンは、遠慮がちに口を開けた。そのまま、パクッと卵焼きを食べる。無言で咀嚼するレンを、穂香は心配そうに見つめた。「どう?」「味はいいですね」「うんうん、そうだよね!」レンは「あとは、私がお腹を壊さないかですね」と深刻な顔をする。「失礼な……大丈夫だよ。それ作ったの私じゃなくてお母さんだから」穂香はふと視線を感じて振り返った。そこでは、すごいものを見てしまったというような顔で穴織がこちらを見つめていた。「あ、穴織くん?」化け物と戦っていたことが頭をよぎり、穂香の声は思わず震える。でも、穴織は昨日のことなんてなかったかのように、いつも通りだ。(そっか、穴織くんは、私の記憶を消したと思っているから、私もいつも通りにしないと)穂香がニコッと作った笑みを浮かべると、穴織は大げさな動きで頭を抱えた。「自分ら幼なじみとか言って、ガッツリ付き合ってるやん!」「付き合ってないよ」否定した穂香のあとにレンも続く。「付き合ってませんね」「じゃあレンレンは、付き合ってない女子に、あーんで食べさせてもらったん?」「そうですね。流れで仕方なく」穴織は「こっちの学校はすごいなぁ」と感心している。「まぁ、自分らが付き合ってないならちょ

  • 恋愛ゲームの世界から脱出する方法はイケメンからの告白!?   第14話 好きになってもらうための努力

    「別の世界線では、穴織くんが主役になれる……。なるほど」確かに話す武器を持って化け物の戦っている穴織は、主役級のストーリーがありそうだ。そう納得した穂香は、ハッと気がつく。「じゃあ、生徒会長や先生にもそういう隠された秘密があるってこと!?」「そうなりますね」「どうして、この世界は平凡すぎる私に、そんなキャラの濃い人達と恋愛させようと思ったの!? 絶対に無理でしょうが!」頭を抱えた穂香に、レンは「深く考えたら負けですよ」と微笑みかける。「夢なのに、なかなか冷めないし……。やっぱりもうレンに好きになってもらうしかないよ」穂香が縋るように見つめると、レンの瞳がスッと細くなる。「それこそ無理だって言っているでしょう? 人の心はどうにもなりませんよ。そんなことより、せっかく穴織くんの秘密が分かったのだから、穴織くんと恋愛すればいいのでは?」「いや、記憶を消されそうになったんだよ⁉ 怖いから無理! 私はレン以外と恋愛は無理だから!」レンは、深いため息をついた。「そもそも、私があなたを好きになるためには、あなたも私のことを好きになる必要があるのでは?」「そっか……そうだね。恋愛をするんだから、お互いに歩み寄らないといけないよね」それが分かっても恋愛経験ゼロの穂香には、何をどうしたらいいのか分からない。穂香は、改めてレンのいいところを探してみた。「えっと、素敵なメガネですね」「それってもしかして、私をほめて仲良くなろうとしています?」「うん」「でしたら、もっと他に言い方があるでしょうに、まったくあなたという人は……」レンのあきれた視線が穂香に刺さる。「だって私、付き合ったことはもちろん男友達すらいたことがないんだって! だから、私に恋愛は無理だって言っているのに……」うっかり涙ぐむと、レンはまたため息をついた。「あなたに恋愛経験がないことくらい知っていますよ。でも、ここは恋愛ゲームの世界なんですよ? 難しく考えずゲーム感覚で頑張ってみては?」「ゲーム感覚……ということは、レベル上げとか?」穂香の言葉を聞いたレンは「と、言うと?」と言葉の先をうながす。「ほら、ゲームってレベルを上げたら強くなるでしょ? だから、私は女子力レベルを上げて、レンの好みの女性を目指すのはどうかな?」「なるほど」「で、レンの好みは『積極的に問題を解決する人

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